『Feed maggots until we die』に見た〈対バン〉の理想。

食べ合わせの良いメニューというのは、それぞれの料理がお互いの持ち味を打ち消さないばかりではなく、それを高め合うもの。1月24日、渋谷CYCLONEで『Feed maggots until we die』と銘打たれたライヴを観ていて、改めてそんなことを思わされた。

このライヴは、FALLING ASLEEPとSUGGESTIONSの共闘によるもので、この少々禍々しいタイトルは、双方によるスプリット・シングルにも共通して掲げられているもの。コロナ禍の影響でライヴ開催に伴う観客数制限などの規制が解けない状況が続くなか、いわゆる2マン・ライヴの二回まわしという大胆な方法で、しかも開演時刻を前倒しにして20時までには完全撤収というタイムテーブルを組んだうえで、彼らはこのライヴを決行したのだった。

僕がこのライヴに出掛けたのは、CYCLONEが普段から感染防止のための対応を徹底しているのを知っていたからでもあるし、それ以上に、この状況下でもなんとかこのライヴを実施したいという双方のバンドの並々ならぬ意気込みを感じたからでもある。そして何より、双方がこの機会のために用意した新曲たちの刺激に強く惹かれたからでもあるわけだが。

実はライヴの前日にあたる23日の午後には、双方のバンドの代表者たちを集めて話を聞く機会もあった。もちろん密を避けながら、全員マスクを着用したままで。その際にも、話を聞いているだけでこちらがちょっと照れくさくなるくらい、両バンドが音楽的相思相愛関係にあることを感じさせられたのだが、そうした印象は、実際にこのライヴを観たことでいっそう強いものになった。双方の本気がお互いをいっそう光らせ、双方の描く闇がお互いの世界をさらに深みのあるものにしているのを実感させられたのだ。お互いの良さを引き出し合い、その場の空気を高めていくこと。そうした相乗効果こそ、こうした〈対バン〉というものの最大の意義であるはずだと思う。

詳しいことはまた機会を改めて、彼らの発言を交えながらどこかで書こうと思うが、まずはとにかく、この日のライヴが素晴らしかったことをこの場に書き残しておきたい。また、せっかくライヴを撮影させていただいたので、取り急ぎ、双方のフロントマンの写真のみ紹介しておくことにする。

そして1月30日、『Feed maggots until we die』は大阪での第2ラウンドを迎える。身体がふたつあったなら、これからこっそり大阪に向かいたいくらいの気持ちだ。とはいえ、自分がこの世に2人いたならばそれはそれで厄介だろうし、お互いを高め合うような関係にはなりそうにない気がするが。


今回の二夜公演開催に伴うヴィジュアル。同時にこれはもちろん、スプリット・シングルに伴うアートワークでもある。配信はこちら↓から。




VINCENT(FALLING ASLEEP)

NiiK(SUGGESTIONS)

妖気と狂気。殺気と躍動感。フロントマンが単なる歌い手ではなく、パフォーマーと形容したくなる存在であることも、両バンドの共通点のひとつだ。


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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。