本を読むのはもっぱら電車やバスでの移動中や、ライヴの開演待ちの時間。家に居る時には書くべきものや聴くべきもの、〈いつかやらなきゃ〉な雑用も溜まっているからだ。加えて、電車やバスの車中でずっとスマホばかりいじっている人ではありたくないから、というのもある。
というわけで、移動もライヴも少なかったためにここ1年ほど落ちていた読書量がちょっと復活傾向にある。まだまだ守らなければならない規制は多いけども、当たり前の日常が少しは戻りつつあるということなのだろう。
というわけで、先日読み終えたのが、ずっと〈積ん読〉状態のままだったポール・オースターの『冬の日誌』。この人の作る物語には体験的要素が色濃く反映されていることが多々あり、どこか自伝的な感触を伴ったものも多いのだけども、これは実際に人生における〈冬〉を迎えたオースター自身による回顧録となっている。かなり癖の強い構成と文体で、決して読みやすいとは言えないのだが、彼の小説と同様、なんだか抜け出せなくなる空気がある。ただ、この本と対を成す『内面からの報告書』、つまり精神面を軸とする回顧録を続けざまに読むのはちょっとしんどそうなので、そちらについては少し時間を置いて『冬の日誌』の余韻を敢えて消してから読んでみようと思っている。
そして同じく本の山からようやく取り出したのがロブ・ハルフォードの自伝『CONFESS』だ。英語の本を読み始めるのは覚悟が要るけども、想定していた以上に読みやすく、わからない単語をすっ飛ばしながら読んでもわりと理解できる。しかもその内容はかなり赤裸々だ。読み終えるまでにはまだまだ時間がかかりそうだが、日本語版が4月末に出るようなので、遅くともそれまでには読了しておきたいものだ。
移動中や開演待ちの時間以外に読書することがあるとすれば、入浴中に浴槽に浸かりながら、ということになる。ただ、さすがにその場合は内容的に重いものは避けたいし、できれば眼鏡をかけずに読めるものだと好都合だ。それにぴったりと当て嵌まったのが、先月、誕生日にある方からいただいた『60(カンレキ)すぎたら本気で筋トレ!』という本だった。子供向けの本かと思うくらいフォントが大きいのだけども、これは老眼が当たり前な読者層に向けられた本だからなのだろうね。そんな新設設計な本を読むだけでは肉体的な衰えを止めることはできないので、実は自分なりにあれこれ取り組み始めている今日この頃だったりもする。こうして書いていて改めて思ったけども、この4冊、オースターの2冊以外は関連性がなさそうでいて、実は結構繋がりがある。人生の〈春〉とか〈夏〉にある人が読むものではないかもしれないな、ということだ。60歳はまだ〈冬〉ではないはずだが、できるだけこの〈秋〉を長く実りの多い季節にしたいものだ。
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
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