古巣のシンコーミュージックから『ザ・ライフ・オブ・グレン・ヒューズ』という分厚いムックを見本誌としてお送りいただいた。新たに何かを書いたわけではなく、遠い昔に書いたインタビュー記事が再録されているからだ。
正直に言うと、自分がグレン・ヒューズにインタビューしたことがあった事実自体を僕はすっかり忘れてしまっていた。直接的な対面取材ではなく国際電話によるものだったためでもあると思う。元の記事が掲載されていたのは僕が編集長を務めていた時代の『MUSIC LIFE』誌1996年8月号。改めてそれを読み返してみた。すると、取材したこと自体も忘れていたくせに「そうそうそう! こんなこと言ってた」と記憶が蘇ってくるのだから不思議なものだ。
このインタビューのなかで僕が当時の最新作にあたる『ADDICTION』について「今作はこれまで以上にダークでヘヴィ。しかし作品の方向性がどうあろうと歌声は常にソウルフルであり、それがあなたなのだと思います」といった指摘をすると、グレンは「そう言ってもらえて嬉しい。キミは僕が音楽的にどういう人間であるのかをよくわかってくれているみたいだ」と言い、次のように語っている。
「多くの人は僕をあくまで〈元DEEP PURPLEのグレン・ヒューズ〉として見る。それは事実だ。だけど僕はイアン・ギランとは違うことをしようとした男だし、DEEP PURPLEにそれまでとは違った何かを持ち込もうとした人間だ。僕としては〈グレイトなロック・ソングを歌う非常にソウルフルなシンガー〉として自分が人々に認知されるようであればいいなと思っている」
そうした会話の流れのなかで、彼は当時のオルタナティヴへの興味を認めていたりもする。ことにSOUNDGARDENとALICE IN CHAINSは彼のお気に入りで「過去5年くらいで考えたなら、僕が本気で心底素晴らしいシンガーだと思えるのは、まずのクリス・コーネルだね」と絶賛し、レイン・ステイリーについても「クリスとは違った意味で素晴らしい」と語っている。グレン・ヒューズは50年にわたる音楽家人生を経ながら今も現役で活躍中だが、まさかクリスやレインがこんなにも早く旅立ってしまうことになるとは思っていなかっただろう。
せっかく新刊本が出たばかりなのだから引用はここまでにしておく。ここから先は『ザ・ライフ・オブ・グレン・ヒューズ』をお読みいただければ幸いだ。
ところで、この記事を22年ぶりに読みながら思い出した別のインタビューがある。やはり同じ90年代、ソウルフルなロック・シンガーの代名詞というべきポール・ロジャースと話をしした時のことだ。彼に〈最近のお気に入り〉を尋ねたところ、すごく気に入っている歌い手がいるのだがバンド名が思い出せないと言って考え込み、「確か、ジュマンジみたいな名前だった」と口にした。「そんなやつ、いたっけ?」と一緒になって考えた末に判明した正解は、なんとJAMIROQUAIだった。共通項は頭文字がJであることのみ。ポール自身も大爆笑していたのを思い出す。
というわけで、自分が忘れかけているインタビューの発掘や再読も、これからしていかなければいけないことのひとつかもしれないな、と思い始めている。それ以上に、新たなインタビューを行ない続けていきたいのは当然のことなのだが。
オリジナルの記事が掲載されていたのは、こちらの号でした!
グレン・ヒューズ作品のなかでも特に好きな1枚。
『HUGHES/THRALL』(1982年)
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
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