日記をつけてこなかったのを後悔することがときどきある。こうして仕事歴が長くなってくるにしたがって「あれから何年を経た今」みたいな記事を書く機会が増えてきているのもその理由のひとつだ。きちんと日記をつけてさえいれば、何年の何月、どこで誰の取材をし、どんなライヴを観ていたかもすぐに裏付けが取れるのに。ただ、たびたびそんなふうに思わされているくせに相変わらず日記をつけていないということは、自分自身がそういうことに向いていないということなのだろうな、とも思う。
2月の記憶、というのも多々ある。なにしろ2月生まれだったりもするし(それはあんまり関係ないか)、この時期は例年、真夏のオーストラリア経由で来日するアーティストも多かったりするだけに、それに伴う記憶というのも多い。同時に、この時期の海外出張の記憶なども結構あるのだけども。
30年前の今頃、1991年の1月下旬から2月上旬にかけてはロサンゼルスに滞在していた。『USE YOUR ILLUSION』と題された新作アルバムの完成が近付いていたGUNS N' ROSESの取材のためだった。当時は湾岸戦争の真っ只中で、ハリウッド界隈もわりと閑散としていた記憶がある。
で、肝心のGUNS N' ROSESについてはなかなか取材日が確定せず、「もう明日あたりには帰国しないとマズいんだけど」というタイムリミットぎりぎりにダフ・マッケイガンとスラッシュの個別インタビューがとれたのだが、それまで待機していた期間中にも他のアーティストの取材をいくつか行ない、偶発的に観ることができたライヴも幾つかあった。メルローズ通りにあった店でたまたまチケットを見付けて観ることができたのが、2月4日、ユニヴァーサル・アンフィシアターでのJANE'S ADDICTIONのライヴだった。しかも前座はNINE INCH NAILS。JANE'S ADDICTIONはこの時期に同会場で4日間ほどの公演を行なっていて、チケットはいずれも完売とのことだったので、これは本当にラッキーだった。余談ながら、取材オファーに対する返答をなかなかくれず、結局のところ応じてくれなかったアクセル・ローズは2月1日の公演を観ていたようだ。MTVのニュースでそう報じられていた。
結局のところ、完成間近と伝えられていた『USE YOUR ILLUSION』というアルバムは、それから半年を経てから、しかも2枚に分けての同時発売という形で世に出ることになった。結果的にはえらく先走ったタイミングでの取材ということになったわけだけども、あの時期のGUNS N' ROSESがこうして日本の雑誌からの取材オファーに応えてくれていたというのもすごい話だなと思う。ちなみに当時はまだ、彼らのマネージメントやゲフィン・レコーズの担当者とのやりとりはFAXで行なっていた。
あの取材から30年。湾岸戦争から30年。初めてJANE'S ADDICTIONとNINE INCH NAILSを観た時から30年。そして気付かされる。そうか、当時の自分は今現在のちょうど半分の年齢だったのだな、と。今さらだけども日記、始めてみるかな。
30年前の渡米時の取材記事が巻頭特集となったBURRN!誌1991年4月号。
当時のNINE INCH NAILSはまだ『PRETTY HATE MACHINE』(1989年)期。この時期の彼らを観られたこと自体も貴重だったと思う。ストロボ点滅しっぱなしのステージで、正直、何がなんだかよくわからなかったけども。
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
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