日常にライヴが戻ってきた。もっと言うと、ライヴが終わってからの「軽く一杯」を楽しめる当たり前の生活が戻ってきつつある。同時に取材の機会も増えてきて、毎日が慌ただしくなってきた。というか実際にはかつての状況に戻りつつあるだけのことなのだから、それを慌ただしいと感じるのはやはり自分がなまっていた証拠ということになるのだろう。なんだか「あーあ、また何も片付き切らないうちにこんな時間に」と感じながら1日を終えることがとても多い今日この頃。こうして久しぶりにブログなど書いてみようと考えたのは、そんな毎日を過ごしているといろいろなことを忘れてしまいがちでまずいぞ、と思ったからだ。
4月8日、吉祥寺・ROCK JOINT GBでThe DUST'N'BONEZのライヴを観た。これが本当にお世辞も贔屓目も抜きにして素晴らしかった。爆音にまみれてライヴの様子を写真に収めながら感じたのは「ああ、自分はこのバンドを待っていたのかもな」ということ。このバンドが初のライヴを行なったのは2004年3月17日の深夜だった。そのステージももちろん目撃しているのだが、あの夜からすでに18年以上が経過しているという事実に驚かされる。そうか、あの頃は自分も戸城憲夫も40代。おそらく「ようやく厄も明けたことだし」なんてことを言い合っていたはずだ。それが今ではお互いに還暦を超え「さすがにライヴの前から呑むと疲れるようになってきちゃってさ」なんて話をしていたりする。
しかしこの夜のThe DUST'N'BONEZのライヴは、そんな時間の流れを感じさせないものだった。いや、むしろ、長い時間経過を自覚できているのに今現在なりの成熟感と新鮮なスリルとを同時に堪能することができたからこそ、僕は感激したのかもしれない。今、このバンドに森重樹一は不在だ。かつて、このバンドの紹介記事には「あの森重と戸城がふたたび運命的合体!」的な見出しがつくことが多く、実際そこに価値を見出している人が多かったはずではあるが、顔ぶれが変わることでバンドの空気感に変化が生じることはあっても、それがプラスに働くことだってあるし、それによって楽曲の本質まで変わってしまうわけではない。しかも2022年の彼らはかつてとは違った刺激も持ち合わせている。
現在のフロントマンは、首振りDollsのnao。同バンドではドラムを叩きながら歌っている彼が、このバンドではマイクスタンドを持ってステージの最前線で歌う。その彼の姿に70年代前半当時のスティーヴン・タイラーを感じた。そういえば首振りDollsを初めて観た時には、1975年頃のKISSみたいだと感じたんだよな、と思い出す。なんだか頭の中でいろいろな記憶と想いがぐるぐると回り始めてくる。
とにかくこの夜のライヴは自分にとって大切なものになった。その記憶が鮮明なうちに彼らの取材をしようと思っている。ちなみにThe DUST'N'BONEZの復活アルバムは5月18日に発売される。そして6月15日には首振りDollsの新作アルバムも登場する。どちらも、とても楽しみだ。そして、今もこうして楽しみにしている新譜がある、という当たり前の喜びを感じられることを嬉しく思う。
現在のThe DUST'N'BONEZ。4月8日、開演直前の楽屋にて。
2004年、The DUST'N'BONEZ結成当時のプレスリリースより。書いているのは自分なので無断転載ではない。
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
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