4月9日、ひさしぶりに、ゆりかもめに乗った。そのこと自体にはべつにこれといった意味も意図もなかったのだが、あまりにも天気が良くて気持ち良かったのと、ちょっと疲れが溜まっていてゆったりとした時間を過ごしたかったこともあって、ルート的には地下鉄を使ったほうがずっと近いところに向かうのに、ちゃんと景色が見えるJRとゆりかもめを乗り継いで行くことにしたのだった。しかも新橋駅にホームに着いてみるとちょうど次の車両が到着したばかりで、最後部車両の一番後ろの席が空いているではないか! 起点となる景色から徐々に遠ざかっていくこの席からの眺めが僕は先頭車両の車窓からのそれ以上に気に入っていて、少しばかりうきうきしながら遠足気分で目的地へと向かうことになったのだった。
ちなみに僕が好きなのは大都会然としたビル群とかではなく、むしろこうした無機質な線路の風景。この日は何も音楽を聴かずに乗っていたが、インダストリアル系なども実はこの景色によく似合う。この手の風景もその種の音楽も、何故か不思議な落ち着きをもたらしてくれるところがある。今回も効果てきめんだった。だからわざわざ遠回りをして出掛けて良かった、と思っている。
目的地は、新豊洲の駅近くにある豊洲PIT。この日はMary’s Bloodのライヴが行なわれていた。この一夜を終えると彼女たちは活動休止に入ってしまう。活動再開の時期や形は約束されていない。そんな状況下でステージに立つときのモチヴェーションというのがどんなものであるのかは、おそらく同じ状況に身を置いたことのある人間にしかわからないのだろうと思う。が、それでも二部構成の長時間にわたるライヴを通じて、彼女たちの覚悟や気迫、意地といったものが伝わってくる気がした。また、僕自身は基本的に長めのMCというのがあまり好きではないのだが、ステージ上の彼女たちの口からはまさに「思いが溢れてくる」という感じで、その言葉ひとつひとつに、用意された台詞とは違った切実さと誠実さを感じずにいられなかった。彼女たちが伝えたかったのは、それではなかったのかもしれないが。
彼女たちはこの先それぞれの道を歩んでいく。そしてふたたびMary’s Bloodという場を共有することになるのがいつになるのかは、おそらく誰にもわかっていない。ただ、そこに至るための近道を探すことに囚われるのではなく、ときにはこれまで歩んできた道を振り返りながら、敢えて遠回りをしつつ進んでいくのも悪くないんじゃなか、という気がする。
Mary’s Bloodの皆さん、素晴らしいライヴをありがとう。皆さんに、さらなる素晴らしい日々が待っていますように。
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
1コメント
2022.04.11 07:14