安堵感と、一抹の寂しさと、ブリーフ党。

運命の4月8日。ついに、JUDAS BRIEF党の臨時ヴォーカリストとしてステージに立つ日がやってきてしまった。しかもこの日の出番はなんと最後。出演順の逆にリハーサルをする、いわゆる〈逆リハ〉であるため、演奏開始は21時からなのだがサウンドチェックは12時半から。正午過ぎに会場である吉祥寺Silver Elephantに到着すると、すでにメンバーたちも揃い始めていて、なんとも言えない不思議な感覚で場内に足を踏み入れた。極度の緊張でもなければ単なるワクワク感でもない。過去、もうちょっと余興めいた感じでのライヴ出演経験は何度かあるものの、今回のように45分間、全9曲も歌ったことは一度もない。もちろん全員でスタジオに入ってのリハーサルは3回経てきているし、本番通りの曲順で二度通して歌ったりもしてきた。が、本番でちゃんとできるという確証など持てるはずもなかったし、客席からどんな反応が返ってくることになるのかも想像できずにいた。

しかし、これまでの練習の際にも感じていたのは、とにかくこのバンドがとても楽しいということ。演奏時だけではなく、もちろんその後の〈軽く一杯〉も含めてのことだ(当然ながら一杯では終わらないのだが)。メンバーの皆さんが口癖のように「とにかく楽しくやりましょう」と言ってくださっていたことも、僕のプレッシャーを軽減させてくれていたと思う。

そして実際、この日のライヴを僕自身、とても楽しませてもらった。演奏曲目については先日アップした通りだが、45分間が本当にあっという間のように感じられた。僕にはもともと、いざとなると肝が据わるみたいなところがあるようで、あの衣装を着用して、オープニングの“Hellion”が流れるのをステージ袖で聴いているうちに、邪念みたいなものが吹き飛んでしまった。気が付けば、当日のリハの時には出なかった“Exciter”と“Screaming for Vengeance”のいちばん高いところもどうにか出ていた。サングラスを装着したために、せっかく用意した歌詞のカンペがあまり役に立たなかったのは計算外だったが、なんとか曲構成を大きく間違えることもなく歌うことができた。

僕のような立場の人間がステージに立って歌うというのは、ふだん取材対象としているプロフェッショナルな音楽家たちに対してはある意味失礼なことなんじゃないかとも思えるし、それこそライヴの感想を求められて「今日は声の伸びが欠けていたんじゃない?」なんてことを言うこともある自分がろくに歌えなかったりすれば、何を言われても言い返せない。だけども今回は自分なりに精一杯やらせてもらったつもりだし、ステージから見ることができた景色から判断すれば、ご来場くださった皆さんにもお楽しみいただけたのではないかと思う。馴染み深い顔が客席にいくつも見えることで心強かったというのもあるし、見知らぬ人たちが一緒になって歌い、騒いでくれるのを目にしながら、僕自身の気分もどんどん高まっていった。というかそれ以前に、JUDAS PRIESTの曲というのは歌っていて高揚を抑えきれなくなるのだ。同時に血管ブチ切れそうにもなるけども。

というわけで、一夜限りの臨時ヴォーカリストの役目は(たぶん)無事に終了した。今はその安堵感もあるのだが、同時に、もう次の練習はないんだ、というある種の寂しさを感じていたりもする。またいつか、機会があれば……。とはいえ夢中になり過ぎて、本業のほうがおろそかにならぬよう心掛けたいところである。

Silver Elephantにはこれまで来たことがなかった。初めて訪れたその日がまさか出演日になるとは。

ライヴ中の俺。なんだか楽しそうですね。めたぽんさん、写真ありがとう。

終演後、HATTALLICAのJames Hirofield、そしてDJ狂犬と。

左からSatotsu(END ALL)、わたくし、MAD大内、DJ狂犬、楠大地(BLACK SWEET)。偶然にも全員が帽子着用。


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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。