アムステルダム出張日記【10】

忙しさにかまけてなかなか更新できずにいたのだが、4月28日の夕食後からの続きを。

ダム広場付近のカジュアルなレストランにてごく家庭的な料理で腹を満たした後は、夜の街を少しぶらぶらしながらMELKWEGというクラブに向かった。この店名は英訳するとMILKYWAYということになるみたい。昔から結構有名で、ガイドブックなどには「地元の若者文化の発信地」みたいなことが書かれていたりもする。2016年の夏にはちょうど欧州ツアー中だったNOCTURNAL BLOODLUSTをここで観たこともあった。

▲昼間に前を通りかかった際に撮ったMELKWEGの外観。さすがオランダ、という感じで会場前には自転車がぎっしり。


この日、MELKWEGでは『METALLICA-AMSTERDAM TAKE OVER』と銘打たれた1日がかりのイベントが行なわれていた。彼らのファンにはお馴染みであるはずのフォトグラファー、ロス・ハルフィンの新作写真集発売記念のトーク・ショウが昼間から開かれていたり、午後からはMETALLICA関連の映画やライヴ映像作品が上映されたり(日本で言う「爆音上映会」みたいな感じなのだろう)、さらにはそれとは関係なく翌日のMETALLICAのライヴにスペシャル・ゲストとして登場することになっているICE NINE KILLSのライヴが組まれていたり。METALLICAの公演は27日と29日に組まれているため、要するに、その間にぽっかりと空いた28日をMETALLICAファンが楽しみ尽くすためのイベントとして企画されたのだろう。

これはある意味、至れり尽くせり。なにしろ地元のファンばかりではなく、METALLICAを観るためだけに各国からアムステルダムを訪れている人たちが、僕自身も含めて何千人といるはずなのだから。そうした人たちの多くは、この貴重な“空き日”をありがちな観光に費やすよりも、ツアー初日の余韻を味わいながら翌日の公演への期待感を高められるような過ごし方をしたいはずだ。

そうした人たちがいかに多いかについて思い知らされたのは、実はアムステルダムに向けて出発する前のことだった。この出張を決めた時点から「28日、何かライヴやってないかな?」とスケジュールを調べていた僕は、この日にMELKWEGでICE NINE KILLSのライヴがあることにはとうに気付いていた。ただ「どうせ翌日にも観ることになるんだし、もしも他に何もすべきことがなかった場合に観に行けばいいや」程度に思っていたのだが、渡航直前に改めてMELKWEGのオフィシャルサイトをチェックしてみると、チケットは完売。しかも、前にスケジュールを調べた時にはそこに記載されていなかった『METALLICA-AMSTERDAM TAKEOVER』の告知があり、ロス・ハルフィンのトーク・ショウまでソールドアウトになっていたのだ。

ぶっちゃけ、ロスとは1990年当時から面識もあるので、彼にメールを送って観覧の手配をすることもできなくはなかったのだが「ライヴを観た翌日の午前中から観に行くのはキツいかもなあ」と感じ、同時にこの日のスケジュールを埋めてしまうと街歩きを楽しむ時間がほとんどなくなってしまうと思ったので、それは諦めることにした。ただ、この『METALLICA-AMSTERDAM TAKEOVER』の最後に組まれている『JUMP IN THE FIRE』というイベントだけはまだチケットが購入可能でしかも安価だったので、念のため購入しておいた。おそらくJUMP IN THE FIREという名前のトリビュート・バンドのライヴなのだろうと思っていたからだ。

ところが実際にアムステルダムに到着してからMELKWEGに問い合わせてみると、これはライヴではなく、イベント全体のアフター・パーティ的なクラブ・イベントで、明け方まで行なわれるものなのだという。ちょっと面白そうな気もするが、翌日はMETALLICAのライヴ。さすがに夜明けまで爆音DJを聴きながら飲んだくれているわけにはいかない。午前零時を過ぎると地下鉄も運行を終えてしまうから、街の中心部から離れたホテルに戻るのもちょっとキツい。というわけで「とりあえず覗きに行ってみて、あまり面白くなさそうだったら早々に引き上げよう」という気持ちでMELKWEGに向かったのだが、結果、僕が同会場を後にしたのは、そこに到着してから約30分後のことだった。

なにしろDJが酷かったのだ。音響も照明も素敵な会場なのに、ステージ上のDJブースには普段着の普通のおじさんが2人いて、METALLICAとはまるで関係のない曲ばかりかけていた。METALLICAファン、もしくはICE NINE KILLSのライヴを観た後のファンが遊びに来るはずなのだから、せめてMETALLICAのTシャツを着て来るなり、それっぽい選曲をするなりして欲しいところだが、僕がそこでビールを2杯飲んでいた間の選曲はFASTER PUSSYCAT→DANZIG→L.A.GUNSという流れだった。こういう脈絡のないセレクトも実は好きだが、イベントの趣旨からあまりにも掛け離れている気がした。DANZIGはアリだろうが、それ以降の選曲も80年代的なものが続いた。

METALLICAのTシャツを着た人たちも、ICE NINE KILLSファンの若い女性たちも今ひとつ楽しみきれていない様子だった。正直な話、「俺にDJやらせろ!」と挙手したくなるほどだった。とはいえもちろんそういうわけにもいかず、「これは土産話にすらならないぞ」と思い、早々に退散することにしたのだった。そして無事に、地下鉄があるうちにホテルに帰還することができた。

というわけで、4月28日の話はここまで。アムステルダムでのMETALLICA公演第二夜の話はまた次回に。


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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。