ミュージックライフの兄貴よりも妹に共鳴した男。

もう1ヵ月ほど前の話になるのだが、9月下旬のある日、森重樹一をインタビューした。話の主題は当然のことながら、10月24日に発売を控えていたZIGGYのニュー・アルバム『ROCK SHOW』。このアルバムの根底的な部分については、すでに発売中の『MASSIVE Vol.32』で彼と現在のZIGGYにおけるバンマス的立場にあるカトウタロウの2人にたっぷりと語ってもらっているのだが、ここでは改めて森重自身のよりパーソナルな想いを浮き彫りにしてみたかった。その際の記事はこちらにアップされているので是非お読みいただきたい。

で、その取材時、僕は自宅の本棚からある雑誌を抜き出して持参した。言うまでもなく70年代の『ロックショウ』だ。洋楽ロック専門誌の『ミュージックライフ』に比べ、ややアイドル寄りというか、音楽に対する批評性とかをいっそう削ぎ落とした感じというか、もっとストレートに言えばミーハーな嗜好に訴えかける雑誌として同じシンコーミュージックから発行されていた同誌は、いわば『ミュージックライフ』にとっての妹分のような存在。森重の名言に「十代の頃の僕の美的感覚はシンコーミュージックによって歪められた(笑)」というのがあるが、もちろんこれは被害者意識を訴える言葉ではなく、彼自身にとってのロックスター像とか美学といったものが当時の『ミュージックライフ』や『ロックショウ』の誌面によって養われた、という意味だ。当然ながら、彼よりも2歳上の僕自身にとっても同じようなところが多分にある。

取材開始前に同誌を取り出して差し出すと、案の定、森重は歓喜の声をあげた。

「そうそう、これなんだよ! 俺を育んできたのはこの雑誌なんだ」

実は彼、十代の頃に購入した『ロックショウ』は今もすべて保管しているのだという。そして「確かに『ミュージックライフ』の妹分だよね。兄貴分の『JAM』という雑誌もあったじゃない? あっちはすぐになくなっちゃったけど」などという50代半ばならではの発言も飛び出してきた。そして誌面を眺めながら、「あ、俺この写真、切り取って下敷きに入れてた!」「この雑誌がいちばん、写真が綺麗だった」といった発言が次々と。ちなみに当時、彼が『ロックショウ』のグラビアで純粋にルックス面でいちばん惹かれたのは、ANGELのギタリスト、パンキー・メドウスだったのだという。そのパンキーも近年、ソロ名義で復活していて、しかもルックスも衰えていなくてすごいんですけどね。


実はこのインタビューの直前、彼と清春の対談取材も行なったのだけども、その対談が終わるまで彼に『ロックショウ』を見せずにいたのは、先にそれを見せていたら絶対に対談の時間が減ったり、その内容が脱線したりすることになるはずなのがわかっていたから。その読みも、正解だった。清春との対談についても合わせてお読みいただければ幸いだ。

そして肝心のZIGGYのニュー・アルバム『ROCK SHOW』なのだが、誰もが〈ZIGGYらしさ〉と認識しているはずのものをしっかりと軸に持ちながらも、80年代のL.A.メタル的なリフ構成(というより、リフ攻勢か?)をひとつの答えとしながらまとめられた、活力にあふれた1枚だ。「ココって、アレでしょ?」と発想の元ネタを探りたくなる楽しさもあるが、こうして作品にトータリティをもたらすキーワードをひとつ見つけることでZIGGYの世界がさまざまな色彩や時代感を持つことになるという現象がとても面白い。オープニングのインストは完全にHANOI ROCKSのアレだけども、いわば〈ミステリー・シティに舞い戻ったと思ったらそこはハリウッドだった〉みたいな感じ。ときどき、ケンジントンの古着屋の匂い(フレディ・マーキュリー的な感触、という意味です。こんな形容も、ML/RS世代ならばおわかりいただけるのではないか、と)が漂う曲もあったりするけども。

この『ROCK SHOW』を引っさげてのツアーも、11月1日に開幕を迎える。今作に詰め込まれた最新チューンの数々が、ZIGGYクラシックというべき楽曲群とどんなふうに溶け合い、どんなロックショウを繰り広げてくれるのかが楽しみだ。

『ロックショウ』1977年5月号を手にしてご満悦の森重。表紙を飾っているのはBAY CITY ROLLERSのウッディとパット。QUEENの初来日を機に一気に増加した〈ロック少女〉がBCRの登場によりさらに増加しつつ低年齢層へと広がり、そのニーズに応えていた雑誌、ということになるでしょう。

この号のなかでの、森重のいちばんのお気に入りページ。彼は今もポール・スタンレー・モデルのギターを使って曲作りをしていたりする。

『ROCK SHOW』

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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。