THE STRUTSをMLの表紙にしたかった。

THE STRUTSの第2作『YOUNG & DANGEROUS』が素晴らしい。全日本プロレスの『チャンピオンカーニバル』並みにベタなタイトルだけども、とにかく素敵な曲がぎっしり詰まっていて、繰り返し聴いても全然飽きが来ない。

正直、少しばかり不安だった。実は前回の来日時に4曲ほど新曲を試聴させてもらっていて、そのなかに‟Primadonna Like Me”なども含まれていたのだけども、すべてがシングルになりそうな曲であると同時にそれぞれ色味が異なっていて、ちょっと拡散に向かいすぎなんじゃないかとも思えたし、誤解を恐れずに言うと、器用なバンドがプロデューサーのおもちゃにされてしまうような怖さも少しばかり感じさせられたのだ。

しかしそんな心配は無用だった。前作と同様、外部のソングライター・チームとのコラボなども目立つし、複数のプロデューサーを楽曲によって使い分けているが、非常にヴァラエティに富んだ内容でありながら散漫な印象とは無縁で、狭そうでいて広いハード・ロックの枠に収まりきらないこのバンドの魅力が存分に活かされている。また、前述の通り外部ライター云々という部分はあるにせよ、ルーク・スピラー(vo)とアダム・スラック(g)が全体を通じて曲作りの核となっているし、メンバーのみの手による楽曲もあり、それらが弱く感じられることもない。プロデューサー陣のなかでは、あのブッチ・ウォーカーの起用が興味深い。今後、両者の付き合いが深くなっていくことを期待している。

実は、こちら(↓)でアルバム評を書かせていただいた時点ではクレジットが手元になく細かい事実関係を確認できずにいたのだが、「〈現代版グラム・ロック〉とか〈クイーンの再来〉といった形容を軽く超越してしまうポップ娯楽作」という印象は変わらないどころか聴くほどに強くなってきている。

そして同時に感じるのは、自分がハード&ヘヴィなもの以外受け付けない耳の持ち主じゃなくてよかった、ということ。前作についても同じことが言えるのだが、彼らの音楽を聴いていると、70年代の少年期に、ラジオの〈ポップス・ベストテン〉的な番組を聴きまくっていた頃のことを思い出す。QUEEN、KISS、AEROSMITHが三大バンドと呼ばれた時代、もちろんMOTT THE HOOPLEやSWEET、ANGELやSTARZ、STRAPPSも好きだったけども、それ以前にCARPENTERSやオリビア・ニュートン・ジョンも好きだったし、WINGSと同じくらいPILOTをよく聴いていた。どこまでがポップスでどこからがロックなのかなんて見当もつかなかったけども、自分が好きになるのが一種類のものではないことは、当時から自覚できていた。で、そんな自分だからいっそうこのバンドに惹かれているのだと思う。

で、思う。「ああ、今こそミュージック・ライフがあればいいのに」と。中学時代から読んできたあの雑誌が仮に今も続いていて、しかも僕がいまだに編集長を務めていたなら、きっとこのバンドを表紙にしていたと思う。それができないのがちょっと悔しいけども、だからこそ今の自分なりの応援をしていきたいと思う。

というか、まずは何よりも早期再来日希望!

長谷部宏さんの写真集をプレゼントしたところ、熱心に見入っていたルーク・スピラー。「好きなバンドがみんな載ってる!」と喜んでいたので「こういう本に載るバンドになって欲しい」と伝えた。なんだか発想がすっかり親目線になっている気がするが、実際、親子でもおかしくない年齢差だったりもする。ちなみにQUEENのTシャツは完全に受け狙い。こういうのを着ていくとすぐさま反応してくれるのが彼です。

1コメント

  • 1000 / 1000

  • チームイズミ

    2018.10.29 08:50

    このアルバムの解説こそ増田さんにして欲しかったんですけど… つくづく業界の「ガラスの天井」の分厚さが(変に)いちファンの聴き方にも影響出てしまいます。リリース1週違いのボヘミアン・ラプソディとストラッツが揃っていたら、と思いました。

増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。