半世紀前に聴き惚れた綺麗なお姉さんの歌声。

1975年は、当時のラジオ関東で放送されていた全米トップ40を毎週末に聞くようになり、その年の夏からはMUSIC LIFEを定期購読するようになった。ある意味、同年は自分にとって洋楽元年ともいえるし、今年は洋楽人生50周年の節目ということになるのかもしれない。なにしろQUEEN、KISS、AEROSMITHの音楽との本格的な出会いもこの年のことだったのだから、自分的にはそれ以前と以降とでは紀元前・紀元後ぐらいの違いがあると言っても過言ではない。

もちろん興味を惹かれたのはハード・ロックばかりではなかった。たとえばCARPENTERSやミッシェル・ポルナレフの曲などはそれ以前から知っていたし、それこそオリビア・ニュートン・ジョンを知ったのも全米トップ40でのことだった。ある週に「そよ風の誘惑(Have You Never Been Mellow)」がランクインしてきて、初めて聴いたその瞬間に、あの綺麗なメロディと歌声に魅了されたのだ。そうした楽曲のイメージとギャップのない彼女の可憐なルックスについて知ったのは、それからしばらく経ってからのことだった。のちに全米No.1になり、日本でも大ヒットしたこの曲のシングルはその年の4月5日に国内リリースされているが、僕が「最寄りのレコード店に、お目当ての新譜を発売日に買いに行く」ということを初体験したのもその時のことだった。

おかしな言い方かもしれないが、当時中学生の僕にとってはオリビアがちょうど良かったのだと思う。スージー・クアトロはちょっとワイルドすぎたし、リンジー・ディ・ポールは少しばかり妖艶すぎた。そういえばかつて「綺麗なお姉さんは好きですか?」という宣伝文句が印象的なCMがあったが、オリビアはまさしくそんな感じだったように思う。

ただ、自分が年齢を重ねていくにつれて気付かされたのは、当時のオリビアは、当時の大人の男性たちにとっては「愛人キャラ」的なところがあったのではないかということ。あの頃は歌詞についてもさほど深掘りしていなかったし、対訳を読んでも普通のラヴソングにしか思えなかったものだが、大人になってから聴いてみると単なる清純派とはちょっと違う、浮気心をそそられるようなニュアンスを感じられるようになったものだ。

とはいえ60代になった現在になって聴いてみても、本当によくできた曲だと思う。これは褒め言葉なのだけど、歌が上手すぎないのもいいし、ちょっとした危うさを感じさせる歌声を支えようとするかのようなアレンジも絶妙だ。そのあたりは初期の松田聖子にも通じるんじゃないかという気がする。ちなみにこの曲、今でもたまにカラオケで歌うことがある。しかも原曲キーである。かなりキモチワルイ図になることは承知のうえで。

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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。