ピアノマンとアクセルの「なるほど」な共通点

1月12日の朝日新聞に『ビリー・ジョエル氏、貧困乗り越え手に入れた邸宅を売却へ』と題されたニューヨーク・タイムズ紙からの翻訳記事が掲載されていた。希望販売価格79億円というその豪邸に関する話自体ももちろん興味深いのだが、その文中に面白い発見があった。

ビリーが育った家庭はテレビもないほど貧しかったが、何故か使い古しのアップライト・ピアノがあり、彼は母親からの強い勧めによりピアノを学ぶことになったのだそうだ。しかし遊びたいさかりの頃に真面目に練習する気にはなれず「ベートーベンのスタイルをうまく真似て、母親に楽譜通り弾いているように信じ込ませていた」というのだ。なんだか微笑ましくもあるが、少年期からそんな誤魔化しができるなんてすごい話だな、とも思わされる。

次の瞬間、どこかで同じような話を読んだことがあるぞ、と思った。遠い昔、アクセル・ローズがインタビュー記事の中で幼少期を振り返り「ショパンの曲を練習しているふりをしながら実はバリー・マニロウを弾いていた」と語っていたのを思い出したのだ。かつてそれを読んだとき、僕はすぐにピンときたものだ。彼が弾いていたのはほぼ間違いなく”Could It Be Magic”だろうと。1975年に全米6位を記録するヒットを記録しているこの曲は、バリーがショパンの” Prelude in C Minor, Op. 28-20”にインスパイアされて作ったとされるもの。もちろん僕はクラシックに精通しているわけではなく、こうした情報は、当時聞いていた全米トップ40の受け売りでしかなかったのだが、のちに原曲を聴いて頷かされたものだ。ちなみにこの楽曲自体はのちにドナ・サマーによるディスコ調のカヴァー、さらにはTAKE THATによるヴァージョンもヒットしている。

近年では『ビリー・ジョエルのMSG公演にアクセル・ローズが飛び入り!」みたいなニュースもたびたび飛び込んできたが、ふたりにはこんな少年期の共通点もあったのだった。彼ら自身がお互いのそんな過去について話したことがあるか否かは定かではないが。

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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。