清春の新作から、聴こえるものと聴こえないもの。

3月18日、清春が自身のツイッター・アカウント上で『JAPANESE MENU/DISTORTION 10』と題されたニュー・アルバムが「ほぼ全編ベースレス」であることを告白した。同時に各音楽情報サイトなどにおいても、3月25日に発売を迎えるこのアルバムが基本的にベース不在の音像による作品であることが報じられている。たとえばBARKSの記事はこんな感じだ。僕が書いたものではないけども。

3月23日、このアルバムよりもほんの少し早く発売される『MASSIVE Vol.36』の巻頭特集のなかでも、当然ながらこの極端ともいえる音像の求め方になった理由については彼自身の口から語られている。ご存知の通り、彼にはいわゆる打楽器抜きでのリズムレス、アコースティックを主体とするプラグレスという形態での活動歴があるうえに、典型的なバンド・サウンドというものに執着していない。そこで引き算の発想で音作りをすることはまったく不自然なことではない。なにしろ現在の彼はあくまでソロ・アーティストとして活動いているのだから。

ただ、ギターでもドラムでもなくベースが不在であるという事実は、黒夢が〈ヴォーカリスト+ベーシスト〉という成り立ちだったことを踏まえると、なにやら意味深いものを感じずにいられない。もちろんインタビュー時にはそうした部分にも話が及んだ。また、ベースレスという音のあり方のヒントになった海外アーティストの名前もいくつか出てきた。こういう時にいつも引き合いに出されがちなTHE WHITE STRIPESだけではなくてね。

『MASSIVE』に掲載されるインタビュー記事は基本的にどれも長いのだけども、なかでも今回は3万字以上にも及ぶ特に長いものとなった。アルバム収録曲のひとつひとつに関する解説というよりも、〈JAPANESE MENU〉〈やまなみ工房〉といったキーワード、デビュー25周年の節目を超えた彼自身の中での考え方の変化といったものについて掘り下げながら、今作が何故このようなアルバムになったのかを徹底的に探ってみたつもりだ。

ファンの方々にはもちろんだが、このインタビューは是非、これまで彼の音楽や考え方に触れてこなかった人たちにもお読みいただきたいし、敢えて言うならアーティストたちの目にも届いて欲しい。そして、これが彼の記念すべきソロ第10作にとっての副読本の役割を果たすものになることを願っている。

副読本といえば、僕は去年からずっと清春の単行本制作に関わってきた。そもそもはとうに発売を迎えているはずだったのだが、さまざまな事情によりいまだにこちらの本は最終的な完成には至っていない。ただ、実は執筆作業はとうに終わっている。こちらについてはアルバムとは逆にいくつかの足し算を施さなければならない状況なのだ。こちらについてもできるだけ早く確かな情報をお届けしたいと思っているので、しばしお待ちいただきたい。


『MASSIVE Vol.36』3月23日発売

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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。