3ヵ月遅れで聴いた旧友のソロ・アルバム。

仕事に時間をとられてしまい、観たかったライヴに行き損ねてしまうことがときどきある。突発的な取材が飛び込んできたり、予定通りに作業が終わらなかったりすると、どうしてもそういう羽目になってしまう。フリーランスは時間を自由に使えていいね、などと言われることもよくあるし、確かにタイムカードに縛られているわけではないが、それでも1日が24時間以上あるわけではないのだ。

そうした理由からライヴに行けなくなるのも悔しいが、もうすぐ出るはずだぞと待ち焦がれていた新譜がすでに発売されていたことに気付かされた、なんて時にはむしろ情けなくなる。そういうことが起こるのは、忙しさを理由に日々の情報チェックを怠っているからでしかない。

実は今、去年からずっと楽しみにしていたくせに、発売から3ヵ月遅れでようやく手に入れたアルバムを聴きながらこれを書いている。『DYING IS EASY』と題された、D.A.Dのフロントマン、イエスパ・ビンザーのソロ・アルバムである。これが、文句なく素晴らしい。素晴らしいからこそ、今日まで手に入れずにきたことをとても悔やんでいる。このアルバムが彼の母国であるデンマークで発売されたのは、昨年11月のこと。そのタイミングで手に入れていたなら、間違いなく『BURRN!』誌の年間ベスト・アルバム10枚のうちのひとつに選んでいたに違いない。

実のところこのアルバムに収められている個々の楽曲は、D.A.Dのアルバムに入っていたとしても違和感のないものではある。だが、明らかに本作にはソロ作品然としたパーソナルな匂いが伴っている。まだ歌詞にまでは目を通していないが、バンドでの作品以上に彼自身の人生観がより反映されたものになっているのであろうことが、聴こえてくる歌声やサウンドからも伝わってくる。そして改めて気付かされるのはイエスパの歌のうまさだ。上手さとか巧さではなく、むしろ美味さという文字を当てたくなる。

『DYING IS EASY』というタイトルは、裏を返せば〈生きていくことは難しい〉という意味なのだろうと思っていたが、このアルバムの表題曲は、正式には“Dying Is Easy(Rock’N'Roll is Hard )”という。ハードなのはロックンロールだけでいい、という意味合いなのかもしれないし、このカッコ内にあるRock'N'Rollは、そのままLifeと置き換えられるのかもしれない。

イエスパはこのソロ・アルバムに伴うツアーを、2月28日から開始する。4月6日に行なわれるコペンハーゲン公演の会場、Pumpehusetは、1989年に初めて彼らの取材でデンマークを訪れた際、彼に連れられてジョニー・ディーゼルのライヴ(これがまた素晴らしかった!)を観に行った場所だ。D.A.Dの面々とは一昨年の夏、ほぼ四半世紀ぶりにスウェーデンで再会を果たすことができたが、久しぶりに彼らのライヴを堪能することはできたものの、その際は時間的な理由からゆっくりと話すことができなかった。この『DYING IS EASY』を聴きながら、あの〈世界三大がっかり〉のひとつに数えられる人魚姫の像のある国を、また訪れたくなっている。

『DYING IS EASY』JESPER BINZER(2017)http://jesperbinzer.com/

2016年7月、ヘルシンボリ公演のバックステージでイエスパと再会。当日はD.A.DとDANKO JONES、HARDCORE SUPERSTARの三つ巴ライヴだった。



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50代半ばというよりはアラ還に近付きつつあるライター増田勇一の、音楽的だったりそうでもなかったりする日々。

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