ホーミなのかオムなのかはともかく、この映画を観るべき。

2月23日の午後、『アメリカン・ヴァルハラ(AMERICAN VALHALLA)』という映画の試写を観てきた。これは2016年に発売されたイギー・ポップのアルバム、『POST POP DEPRESSION』の制作過程とそれに伴うツアーの模様を追ったドキュメンタリー作品なのだが、観終わった後に残るのは、イギーとジョシュ・ホーミのふたりを主人公とする〈現実のドラマ〉という印象だ。

物語は、イギーがQUEENS OF THE STONE AGEのジョシュにアルバムのプロデュースを依頼するところから始まる。この『POST POP DEPRESSION』という作品は、あくまでイギーの個人名義で世に出ているものだが、イギーとジョシュ、そしてジョシュにとってはQOTSAでの同胞であるディーン・フェルティタ、そしてARCTIC MONKEYSのマット・ヘルダースによる、即製でありながら敬意と熱意に満ちた、ツワモノ揃いの〈バンド〉の作品だといえる。

モノゴトの流れをこの場で説明することはネタバレにも繋がるので控えておくが、とにかくこの映画が素敵なのは、観ていて自分がレコーディングやツアーの現場に居合わせているかのような錯覚を味わわせてくれるところだ。その場でマジックが生まれているのを、疑似体験というか疑似体感できるのだ。それは、映像のなかに余計な人物がまったく登場しないからでもあるだろう。だから映画を鑑賞しているというよりは、その現場を目撃してしまったかのような感覚を堪能できるのだ。

だけども同時に、コトの顛末を追っただけの単なるドキュメンタリーにも感じられない。それは、アルバムのプロデューサーであるのみならずこの映画の監督のひとりでもあるジョシュの美学が、随所から感じられるからだろう。実際、すべてを繋げているのはイギーの生きざまであり、ジョシュの美学だと僕は思う。そして結果、『POST POP DEPRESSION』というアルバムの命名にも納得させられるし、アルバム完成後の某日、イギーが迎えたある1日の壮絶さには、思わず絶句させられる。

余談ながら、ジョシュについてはジョシュ・オムと表記されることがむしろ一般的だと思うが、この映画の日本公開に伴う表記はジョシュ・ホーミに統一されており、実際、映像のなかでのイギーも彼の姓をそう発音している。

そんなことはともかく、この映画は4月14日より、東京・新宿シネマカリテにてロードショー公開される。イギー・ポップやQOTSAのファンにはもちろん観て欲しいところだが、彼らに関する知識がさほどなくても充分に楽しめる作品だと思う。音楽を創造する人たちにも、是非観て欲しい。僕もまた改めて、劇場に足を運ぶことになると思う。

『アメリカン・ヴァルハラ』のフライヤー。この写真1枚から漂ってくるのも、ドキュメンタリーというよりはロード・ムーヴィーの匂いだ。詳しくは公式サイトを参照のこと。予告編も見られる。

『POST POP DEPRESSION』IGGY POP(2016年)

youmasuda's Ownd

50代半ばというよりはアラ還に近付きつつあるライター増田勇一の、音楽的だったりそうでもなかったりする日々。

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