強い相手とぶつかりながら自分を高めていく、ということ。

昨日、2月25日の夜は渋谷clubasiaにて『RedruM Fest 2018』を観た。出演者の顔ぶれは登場順にNOCTURNAL BLOODLUST、MORS PRINCIPIUM EST、HATESPHERE、そしてこの催しの主催者であるSERENITY IN MURDER。四者四様の烈しさがぶつかりあう、とても濃い一夜となった。

何よりも素晴らしいと思えたのは、観るたびに進化がうかがえるSERENITY IN MURDERのライヴ・パフォーマンスがこの日もさらなるスケール・アップを遂げていたことと、彼らの心意気というか志のあり方だ。この3月10日に新木場STUDIO COASTでのワンマン公演が控えているノクブラ、フィンランドからの刺客MORS PRINCIPIUM EST、そして実に12年ぶりの日本上陸となるデンマークのHATESPHEREという強豪3組がそれぞれの持ち味を発揮しながら場内の熱を高めきった末に登場するというのは、それなりにプレッシャーの伴うものでもあったに違いない。

このイベントの告知ヴィジュアルには「君は本物のメタルを知っているか?」という一文が伴っていた。この場で何が本物で何がそうでないかという話をするつもりはないが、こうした煽り文句が掲げられたイベントで一組でもショボい演奏をするバンドがいれば、そのバンドのみならず主催者であるSERENITY IN MURDERの審美眼も問われてしまうことになる。しかもこうして彼ら自身が共鳴する強豪バンドばかりを集め、最後に演奏する自分たちのライヴがいちばん小ぢんまりしているなどということにでもなれば、バンドとして致命傷を負うことにもなり兼ねない。

しかしこの夜の彼らのたたずまいは、本当に堂々たるものだった。天井の高いclubasiaのステージが良く似合っていたし、ちゃんとヘッドライナー然とした空気を漂わせていた。もちろん幾つか改善すべき点を感じたのも事実だが、昨年発表の最新作『THE ECLIPSE』が持つ激しくも壮大な空気感というのを、彼ら自身が見事にモノにしているのを実感させられた。フロントに立つEmiの成長によるところも大きいはずだ。加えて、欧州からの2組の強烈なステージを経たのちに、彼らがあくまで音楽的に日本のバンドとしてのアイデンティティを示していたのも素晴らしかった。

正直に言うと、4組も5組も出るようなイベントには充足感ではなくしんどさを感じさせられることも少なくない。が、この夜は時間が過ぎ去っていくのが早く感じられたし、終演後に残ったのはまさに〈心地好い疲労感〉というやつだった。以前、僕が信頼を寄せる某ミュージシャンが「主催イベントを企画する際に、自分たちよりも格下のバンド、確実に勝てそうなバンドばかりに声を掛けるやつが多すぎる」と嘆いていたが、SERENITY IN MURDERはむしろその逆だった。なにしろ自分たちが霞んでもおかしくないくらいの顔ぶれを揃えたうえで、過去最上級と言っていいほどのパフォーマンスを披露し、さらなる躍進を印象づけたのだから。

同じ意味で、3月17日に渋谷・CYCLONEで行なわれるEND ALLのツアー・ファイナル公演にも期待している。当然ながら彼らはこの日のライヴの企画者でありヘッドライナーであるわけだが、ステージを共にするのはABIGAIL、HONE YOUR SENSE、そしてVOLCANOというツワモノたち。そこでEND ALLがどんなステージを見せてくれることになるのかが楽しみだ。加えて僕はこの日、開演前と転換時のDJを務めさせていただくことになっている。

ライヴハウス通いはやはり、やめられない。バンドの進化がこんなにリアルに感じられる場所は、他にない。ただしライヴハウスで摂取するビールの量はもう少し減らすべきかな、と思い始めている今日この頃だが。

終演後、全バンドが勢揃いしてオーディエンスを背に記念撮影した直後のひとコマ。とても気持ちのいいイベントだった。


大阪東京での全3公演となった今回の『RedruM Fest』。今から次回開催が楽しみだ。

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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。