KISS、日本での大千秋楽を迎えた朝に思う。

発売中のBURRN!12月号では、KISSのポール・スタンレーが表紙を飾っている。ロス・ハルフィンの撮影による紙吹雪にまみれたショットは、まさに彼らのライヴのクライマックスを思わせるもの。最高潮であると同時に「ああ、もう終わっちゃう」という瞬間が切り取られていて、このタイミングでの表紙にはもってこいだと感じ、いくつか他にもあった候補写真の中から「これが最高だと思う」と編集長に推薦したのだった。

そう、本当にもう終わっちゃうのだ。この号にはポールとジーン・シモンズの個別インタビューが掲載されているが、その取材の際には「ああ、来日公演を盛り上げようという意図でこの両巨頭を取材するのはこれが最後になるのか」という、これまでに味わったことのない感覚があった。フェアウェル・ツアーの時だって同じような思いはあったはずだが、あの時は「KISSの次に何をするつもりなんだろう?」という好奇心もあったはずだし、やはり今回とは気持ち的に違っていたと思う。

これが正真正銘、最後の最後の大千秋楽。ワールド・ツアー自体はまだ続くけども、日本公演はこれが本当に最後になる。2019年12月の来日時、ステージ上のポールの口から「日本のみんなにサヨナラを言うためにやってきた」という言葉を聞いた時にも、感慨深いというか複雑な思いというか、何と言っていいかわからない気持ちになったものだが、今回のアンコール公演はパンデミックによりツアー自体の終着点が先延ばしになったために実現したものである。

とはいえ今回の公演が決まった際には「ほら、やっぱりまた来るんじゃないか」的な声が気一部から聞こえてきたことは否めないし、いまだに「どうせまた来るんでしょ?」的なツイートなどを目にすることはある。ただ、今回の公演は本当に例外的なものだし、実のところこの『END OF THE ROAD WORLD TOUR』は2023年も継続されるものの(現に夏の欧州ツアーのスケジュールも一部発表済みだ)、そこでもう一度、日本公演のスケジュールが組み込まれる可能性はきわめて低い。

もちろん何事にも「絶対」ということはないし、可能性が完全にゼロだと言い切ることはできないが、ジーンは「50周年を迎えた先までやるつもりはない」と明言しているし、2024年2月で1stアルバムの発売から満50年になることを考えると、その先までこのツアーが続くとは考え難い。ジーンは今回のインタビューの中で「KISSのショウをやるということは、20㎝の厚底ブーツを履き、18kg近い衣装を身に付けて演奏するということでもある。それは80歳の人間にはできないことだ。私はまだ80歳にはなっていないが、いずれそうなる(笑)。要するにKISSがやっていることの物理的性質から言って、やり続けられる年数には限りがあるということだ。それでも50年間やってきたんだから……かなりのものだと言っていいんじゃないか?」と語っている。そしてポールは次のように発言している。

「これは絶対に手に入れたいという感情が湧くことで、自分にとって何がいちばん大切であるかが理解できることがある。確かに人間にはさまざまな義務、やらなきゃいけないことがある。ただ、もしも”これは自分にとって大切なことだ”と思うもの、他のことを差し置いてでも観る価値のあるものだという気持ちがあるのなら、絶対にその機会を逃すべきではない。僕らと君たちの間には素晴らしい歴史がある。そして僕らはもう一度だけ日本に戻ることにした。これが最後の特別な一度きりのショウになる。それだけでも、実際にその場に来て、これまで僕らが分かち合ってきた歓びの限りを体験し、思い出を作る価値のあることじゃないかと思う。もしかしたら明日はないのかもしれない、ということをたまに思い出してみてもいいのかもしれないよ」

というわけで、今夜は1人でも大きの目撃者に東京ドームに居て欲しい。当日券も出るようだし、この機会を絶対に逸して欲しくない。そしてもうひとつついでに言っておくと、12月5日にはBURRN!の次号(1月号)が発売になるので、今回のインタビューが掲載されている12月号は店頭から姿を消してしまうことになる。こちらについても是非、今のうちにお読みいただきたい。今夜、東京ドームで開演を待ちながら読むのも悪くないんじゃないかと思う。

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増田勇一のmassive music life

いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。