1月3日はジョン・ポール・ジョーンズの誕生日。そんな話をツイッター上で目にした。彼の名前を目にするたびに思い出されるのは「どちらが信用できる人間か、わかっただろう?」という言葉である。これはかつて、彼自身の口から聞いたものだ。
1994年11月、ジミー・ペイジとロバート・プラントは、彼らふたりが連名で制作したアルバム『NO QUARTER』のプロモーションのため来日し、僕はインタビューをする機会にも恵まれた。その際の記事はMUSIC LIFEの1995年1月号に掲載されている。
実はその少し前にジョン・ポール・ジョーンズがあるインタビュー記事の中でこのプロジェクトについて触れ「自分は誘われても参加しなかっただろうが、ひと声かけて欲しかった。僕がいればひとりでできることのために彼らはオーケストラまで使っている」といった発言をしていたのを知っていた僕は、ペイジ/プラントの取材時間も終わりに近付いてきた頃にその話を彼らに振ってみた。最後までその話をせずにおいたのは、機嫌を損ねて途中退席されてしまっても困るからだ。で、その質問に対してのロバートの回答は次のようなものだった。
「声を掛けて欲しかったって? 仕方なかったんだよ。実は彼は電話料金を滞納していたみたいでね。そう、電話が繋がらなかったんだ。だから伝書鳩を飛ばしてみたんだけども、あいにく彼のもとには届かなかったようだね」
この発言直後、ロバートは真顔のままだったが取材が行なわれていたホテルのスイートルーム内は爆笑の渦となった。
そして数年後、ジョン・ポール・ジョーンズの取材をする機会があった際にこの時の話をしてみた。その際に彼の口から聞こえてきたのが「どちらが信用できる人間か、わかっただろう?」だったのだ。僕は素直に頷くしかなかった。ただ、同時に思ったのは、誌面に載せて面白いのは伝書鳩発言のほうだよなあ、ということだった。
そういえばペイジ/プラントの取材当日、その伝書鳩発言以上に印象に残ったのは、ホテルから編集部への帰路、長谷部カメラマンが移動の車中で発した「ジミーは意外と真面目に喋るんだけど、ロバートはいつもあんな調子で茶化す。だからこないだもジョン・ボーナムに殴られたんだ」という言葉だった。こないだ、というのはもちろんLED ZEPPELINの来日時のことを指していて、その時点ですでに23年ほどが経過していた。今となってはそれからさらに28年以上が過ぎているわけだが、やっぱり長谷部さんの言葉がいちばん時空を飛び越えている。
このブログ内容とは直接関係ありませんが、ジョン・ポール・ジョーンズがいかに信頼性の高い音楽家であるかを再確認するには昨年発売されたこちらの本が良き参考資料となるはずです。
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
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