27年前の5月の記憶。インディアナでの奇跡と、シアトルでの大佐腹痛事件。

今回は、1991年5月の話。

この時も僕はアメリカにいた。すでにBURRN!編集部が発足してから7年が経過していて、おそらくこれが10回目ぐらいの渡米だったのではないかと思う。MEGADETH、SLAYER、ANTHRAXによる三つ巴ツアー『CLASH OF THE TITANS』(しかもオープニング・アクトはALICE IN CHAINS!)のサンフランシスコ公演を5月26日に観て、28日と29日はインディアナポリスでGUNS N’ ROSESとSKID ROWを観て、30日にはシアトルでふたたび『CLASH OF THE TITANS』を観て、31日にはL.A.のスタジオにブラック・アルバム制作中のMETALLICAを訪ねる……というえらく濃密にしてめまぐるしい取材旅行だった。

とうてい一人ですべてを取材できるはずもなく、この時は同僚の平野和祥記者も一緒だったし、インディアナポリスとシアトルではロンドン在住のカメラマン、ジョージ・チンとも合流。たとえば『CLASH OF THE TITANS』のサンフランシスコ公演の際は、ライヴ・レポートを完全に平野記者にまかせ、僕はバックステージを駆け回って4日後のシアトルでのインタビューの話を取り付ける、といった具合だった。僕が各バンドのツアー・マネージャーと交渉している頃、武道館で言うところの南スタンド席でノートを広げてメモを取っていた平野記者は、元気のいい現地のキッズから「何してんの? 宿題?」と冷やかしの声を浴びせられていたらしい。

とにかくこの出張時にはさまざまなことが起きたのだが、やはり印象深いのはインディアナポリスでの出来事だ。この件については当時のBURRN!の誌面でも触れているし、一昨年の6月に刊行された『ガンズ・アンド・ローゼズとの30年』のなかでも書いているが、この時の僕はイジー・ストラドリンの〈もしかしたらGN'Rの一員としては最後だったかもしれないインタビュー〉に成功してるのだ。しかもそれはこちらから事前にリクエストしていた取材ではなく、完全に予定外のもの。当時、マネージャーのダグ・ゴールドステインにもコントール不能な状態にあったイジーが、1988年末の来日時に会っていた僕の顔をなんとなく憶えていたようで、開演前のバックステージで彼の側から「俺、今、インタビューできるよ」と言い出してきたのだった。

慌てた僕は「ちょっと待って。一応ダグに断りを入れておくから」と答え、そのダグを見つけて訊いてみると「信じられない。奇跡だ。今後いつやれるかわからないし、是非やってくれ」といった返答。そしていざインタビューを始めてみると、彼の口からは、当時まだリリースされていなかった『USE YOUR ILLUSION Ⅰ/Ⅱ』についての「俺に決定権があったなら2枚同時発売なんてことはしなかった」的な発言や、ライヴのあり方などについての疑問も聞こえてきた。もちろん終始なごやかなムードではあったのだが、それが僕にとっては、GN'Rの一員としての彼に向き合う最後の機会となった。

そんな貴重な取材をもぎ取った翌日にはシアトルに移動し、『CLASH OF THE TITANS』の会場でジェリー・カントレル&ショーン・キニー、スコット・イアン、トム・アラヤ、そして牡蠣にあたってお腹をこわしていたデイヴ・ムステインのインタビューをした。彼の目の下には隈ができていて、おそらく40分ほどだったはずの取材時間中、何度かあの声で「ごめん」と言って席を立ちトイレに駆け込んでいた。ライヴ中の彼は、なんとか無事だったのだが。

SLAYERのデイヴ・ロンバードに、人気投票ドラマー部門のチャンピオンカップを贈呈したのもこの時だったな。というわけで、こういう話も忘れないうちにちゃんとまとめておかないとなあ、などと感じている、あれから27年後の日曜日の朝なのだった。ちなみに今週土曜日、6月2日の新宿・ROCK CAFE LOFTでのイベントでも、このへんの話はしようと思っている。

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/rockcafe/88654


GUNS N' ROSESのバックステージ・パス。DCと書かれているので「ワシントンDC?」と思う方もいるだろうが、これはインディアナ公演の会場名がDeer Creek Music Centerだったため。

BURRN!誌1991年8月号の誌面より。

そしてこちらは同9月号の誌面。本当に予定外だったため翌月掲載になったのだった。

『CLASH OF THE TITANS』のパス。当時、読者プレゼント用のサインをもらっていたスケッチブックの表紙にまとめて貼ってあった。

youmasuda's Ownd

50代半ばというよりはアラ還に近付きつつあるライター増田勇一の、音楽的だったりそうでもなかったりする日々。

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