先日、LUNA SEAのニュー・アルバム『CROSS』の特設サイトにて、スティーヴ・リリーホワイトのインタビュー記事がアップされた。去る12月10日に取材したものだ。グラミー賞を5度にわたり受賞しているこの巨匠は5月にも来日していて、その際にも取材させていただいたのだが、とにかく話をしていて楽しい人物。ちょっとキツめのジョークが飛び出すこともあるのだが、それがまた楽しい。そんな彼だからこそ、「プロデューサーにとって重要なのはまずアーティストとコミュニケートすること」といった言葉にも素直に頷くことができる。こちらの記事、LUNA SEAのファンの皆さんはもちろんのこと、そうではない方にも是非お読みいただきたい。
スティーヴ・リリーホワイトの名前を僕自身が初めて認識したのがいつのことだったかは正確には憶えていないが、U2の作品でのことだったのは間違いないはずだ。U2のアルバムでは、やはり最初に大好きになった『WAR』(1983年)への思い入れが強いのだが(初来日公演も観に行った)、ふと思い出すのは以前、『別冊カドカワ』のLUNA SEA25周年記念号のための取材をした際のこと。5人のパーソナル・インタビューが掲載されているなか、僕はINORANとJを担当した。そして各インタビュー記事の最後には、各メンバーがフェイヴァリット・アルバム5作品について語るコラムが設けられているのだが、そこで2人ともこの『WAR』を選んでいるのだ。他4枚はまったく重複していないというのに。
Jはこのアルバムとの出会いを振り返りながら、「音楽を聴いて、初めて涙が出た。自分自身でもそうやって人の心を打つようなメロディを作り、演奏してみたいなと思わせてくれた1枚」だと語っている。また、INORANにとって本作は「音楽ファンとしてのルーツになった1枚」なのだという。しかもこの時点(2014年)において、彼は偶然にもスティーヴとの対面を経ており、愛着深い作品のプロデュースを手掛けた人物との遭遇について「長く続けているとこうした出会いもあるんだな、と感激した」と述べている。実際、その出会いがなければ、こうしてLUNA SEAがスティーヴとともにアルバムを作る、なんてことは起こり得なかったかもしれない。
縁とは面白くて不思議で、どこか運命的なところがあるものだ。そういえばINORANとJの出会いは、JがINORANにハワード・ジョーンズのレコードを借りたことが切っ掛けだったという話も聞いたことがある。これもまた興味深い。こうしたちょっとしたエピソードが、音楽やバンドに触れる時に想像力を膨らませる材料になったりもする。たとえばQUEENの歴史の序章にある「フレディ・マーキュリーとロジャー・テイラーはケンジントン・マーケットで古着屋を共同経営していた」といった逸話と同じだ。当時のふたりは、店に客がいない時はジミ・ヘンドリックスあたりの話でもしていたんじゃないだろうか。同じようにINORANとJも、昼休みの教室で貸し借りしたレコードの話をしていたのかもしれない。
そして、何よりも重要なのは『CROSS』がとても素晴らしいアルバムだということ。必聴ですよ、皆さん。
取材後に記念撮影を。話が盛り上がり過ぎて危うく時間を超過しそうだったので、インタビュー終了後すぐに部屋を出ようとしたら、スティーヴの側から「写真を撮ろうよ!」と言ってきたのだった。ちなみに彼は日本食も大好きで、この前夜は、ひつまぶしを堪能したのだとか。
増田勇一のmassive music life
いつのまにか還暦を過ぎてしまった音楽系モノカキの、 あまりにも音楽的だったり、案外そうでもなかったりする 日々。
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